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「机上登山」楽しさの大部分は計画段階にあり! [山歩き・ウォーキング]

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 山歩き関連本のレポートです。今回は西丸 震哉(にしまる しんや)著の「机上登山」。1998年4月発行で今から17年前の本です。プロフィールによると、著者は大正生まれ。肩書は食生態学者、登山家、探検家。農水省を辞職。登山は23歳頃からでガダルカナル、ニューギニア、アラスカなどの遠征経験あり。画家、作曲家、SF作家としても活動。2012年没。
 

 ざっと目を通した感想ですが、かなりマニアックというか、著者の個性を強く感じる内容です。
簡単に書くと、日本中にある未踏の湖沼や湿地、カール地形の谷などを実際に歩く前提で机上でシミュレーションしたプランが複数書かれています。いわゆるHOW TO本ではなく、著者の嗜好に基づく一方的な発信の本です。このとき著者は75歳、亡くなるまでにこの本に書かれたプランを幾つ実行できたのでしょうか?
 

 感心したのは、まるで実際に歩いた事があるかの様に地形の特徴や植生などが具体的に書かれているところ。本文中にもありますが、これはかなりの実経験を積んでいないと書けないな、と思いました。ハイマツ藪漕ぎ、沢歩き、クマとのエピソード、また世の中に批判的な内容など、かなり個性が強いです。

 具体的なコース内容は興味が湧いたら読んでいただくとして、ここでは記述の中で面白いな!と思ったところを書きだしてみました。 



>机上登山は「机上の空論」とはまったく意味が違う。
登山や探検の楽しさは計画段階にあり、より安全でより楽しめるプランを建てるためには自分の経験とカンが頼りになる。他人の力に頼る部分は出来る限り排除するか期待しないのが鉄則で、現場で動けなくなってSOSなんてのは最低の恥さらし。>ガイドブックは見ない方がいい。せっかくの楽しい作業であるプラン作りは、人まかせにしたら大損をする。
※これは同調できる部分がありますね。自分の歩き方を考慮に入れて、ほぼ計画通りに実行できた時の充実感・達成感は素晴らしいものがあります。ただし私の場合は他の人の情報が重要なウエイトを占めてます…
 






>深田久弥さんの百名山を達成しようと目標を立てる人は多い、人生に目標を見いだせる事は幸せだが、他人の作った百名山は自分の好みと全く同じという事はありえない。
※その通りだと思います。何も深田久弥さんに合わせる必要はないってことです。自分が歩きたいと思った山を自分の歩き方で登る。結果それが百名山だったで良いわけです。
 NHKの「グレートトラバース」は今度200名山パートに入りました。この間プロローグ編を見ました。約半年の間に決められた100山を全て登頂しなくてはなりません。しかも撮影スタッフに付きまとわれながら… 田中陽希さんはかなり辛いでしょうねえ。好きな山だけを気ままに歩けたらどんなに楽しいか… 著者が生きていたら、きっと「バカバカしい、やりたきゃどうぞご勝手に」と言うでしょうね。
 
 

>地形図の狂いがひどい地域は一目でわかる
測量官が自信を持てなくていい加減に等高線を埋めていった所には、良心の呵責がはっきりと出ている。地形図づくりはとても大変。ヤブや岩場がひどくて近づけなかったりするので、ノルマを消化する為には仕方ないこと。
>空中写真を図化した現在の地形図は全面的に信頼が置ける。
※測量官を批判している訳ではなく、狂いがひどい部分に秘境が隠されていると言いたいようです。著者の地形図の読解力、これはきっとすごいレベルだったに違いない!その領域にはどうしたら達することができるのでしょう?
 
 



湖畔展望台夏.JPG
>知床沼の湿原はあくまで平和だ、ただしブユとヌカカと蚊の大群はすさまじい。今は防虫剤があるから全然苦にならない。いづれ永い目で見れば健康を害することになっても、そんなこと気にしていられるか!今がかゆくなくて平和なら少しくらい寿命が縮まっても気にしない気にしない。
※虫は嫌ですねえ。夏場の里山なんかはすごいです。私はその防虫剤が嫌でハッカ水を作って使ってます。でも大群だったらそんなこと言っていられないでしょうね。
 



>何はともあれ、最後に温泉でノンビリと締めるのは、生きてて良かったという実感に浸れる。山歩きをしないでただ温泉に行くだけの人は、同じ事をしたつもりでも気分の良さの総量にはすごく差があるはずだ。
※わかるわかる!著者は源泉近くにテントを張って楽しんだりしたらしい。これは快感でしょうねえ!あと、山歩き後のビールもいい!私は行動中はアルコールを飲まないようにしてます。お酒は好きなんですが、酔っぱらうと下山の時危ないですからね…
 
 
 
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(大雪山 旭岳パートで)
>地形図作成で撮った航空写真に写っていた「SOS」の文字で分かった遭難者の辿った跡を追う。
どうしてこんな所に入りこんだかを想像するのはかなり容易だ。帰りの登山道で金庫岩で登山路が急に右にカーブしている所で真っ直ぐ降りたからだろう。旭岳の山頂へ行く用もないので、金庫岩までで登りは止める。それでも登山家か?と言われそうだが、テッペンを登るだけで満足する性質は持っていないからやめるのだ。後15分で頂上だと言われても行かない。
※う~ん… 私だったら、せっかくだからと山頂に寄り道しちゃうなあ。
 
 



>真上から見下ろせばすぐにわかるような目的地でも、障害物で完全に目隠しされた地表をはいずり廻る二次元の生き物がそれにうまくブチあたるのは、月にロケットを当てるよりもはるかに困難だ。しかしうまく当たったときの満足感は、山道を通って行く登山では絶対に味わうことができない。この楽しみを知ってしまってからは、もう当たり前の山歩きをしようという気にもならなくなってしまった。
※かなりマニアックですね。少しくらいは解る様な気がします。でも、藪こぎは得意じゃないです…^^;
 
 




edfcca_b.jpgCopyright(C) DenaliNPS
>クマが風上にいるときは、(鉢合わせして)お互いビックリし合ってお互いの健康に良くない。ときどき風上に向かって大声を出そう。>クマなんか居るはずもない山道で腰に鈴をぶら下げて、チリチリ音を立てながら歩いている人をよく目にするが、あれはすごく耳障りで、意味が無いだけにやりきれない。わきの藪にかくれていて、ウォーッと叫んでおどかしてやりたい衝動に駆られる^^;
 
>若いクマはまだ人間を見たことがないので、昨日までなかったテントが自分の縄張りにあると、ナンジャコレハ?と興味を持って寄って来る。
 私がかつて失敗したのは、ちょうどテントの中に入っているときで、まわりをドスドス歩き廻られナタを構えて警戒していたために、せっかくクマが来てくれたのに友好的なテレパシーが出なかったのと、静かになってどうしたのかな?と思って空気穴から外を覗いたとき、ちょうどクマも覗きこんで眼が合ってしまい、双方ビックリこいてクマはヤブの中に逃げていってしまった。
※北海道や東北の奥地を探検に出かけたりしているわけですから、クマの対処の仕方もよく解っていらしゃったようですね。非常用にクマ除けスプレーと、焚き火で寄せ付けないようにすると書いてありました。
 
 
 
 
>上高地やオーストリアなどの高原では森の上に雪と岩のガシッとした峰がそびえるので、景色にまとまりがあるが、この湿原にはそういうビックリするものがない。これが日本の湿原の特徴で、あくまでシットリとした深さだけだ。心にドスッとくる、そしてきらびやかでない美しさ、これは世界のどこにもない珠玉のような特質だ。モウセンゴケ、ツルコケモモ、ワタスゲなど、共通の湿原植物の可憐さも日本の湿原の奥床しさに関係してくる。
※これは高山にはあまり行った事がない私には難しいところ。著者が日本の湿原に惚れ込んでいる様子が伝わってきますね。
 
 
 
 
>山登りの実際面で相当の年期を経ないと地図を十二分に読み、いわゆる読破にまで到達するのはむずかしい。地図になれてくると、現地でどの程度に狂っているかがわかってくるし、縮尺のために省略される細かい地形がどの程度か理解できる。それが登山者にとって重要なところもある。書かれてはいないが、あるに違いないものと、まず無いはずだという差をつかめるようになる。 
 この域にまで達しないと、完全な机上登山の計画は立てられないが、完全でなくてもこれまでの経験で楽しいプランを練ることは十分できるし、やらなければいつまでたっても向上しない。とことん検証したつもりでも、現地ではまったく違っている事が多く、そうでなくては山歩きはおもしろくない。だが、地形図にないものを想定して、そのとおりだったときの喜びは大きく、同じ所を歩いていても、感ずるもの・得るもの・見るものの量がまるで違ってくる。
※著者の域には到達できなくとも、自分なりに地形図に対する理解度を深める努力をしましょう。^^
 
 
 
 
>ある特定の人間は未知の世界に突進することに喜びを感ずる。しかしもう未踏の山はないので未踏のバリエーションルートをさがす。自分も一時期そうだったが、今は垂直の未知探訪を水平に近づけることにしてより多くの喜びを見出すことに成功した。国内で未知の部分をさがすには、地形図のデタラメの部分をさがすのが最も手近である。
>その気になったら行ってみたい所は数限りなくみつけてある。一生の間に行けない所も多いが、行くのを想定して細かいプランを立てておくのは楽しい。それがプランだけで終わるとき、即ちカンオケに入る時、机上の登山だったことになる。
※著者のスタイルがよく出ていますね。ピークハントにこだわりなし。 


 
 
>(雪倉岳北にある)この氷河湖はわざわざ来た甲斐があった。
白馬岳から縦走路をただひたすら歩いていく人は山の数をかせぐかも知れないが、生命を終え意識が薄れていくときに、走馬灯の一コマとしてピカッと輝く一瞬となって残されるかどうか…
※記憶が深いものになるかどうかは、登山する目的がハッキリしているかどうか?によるのでしょう。はたして私はどうでしょうか… 
 
 
 
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>近頃の山小屋は皆山荘と名前を変えたのが多い。個室でなきゃイヤとか、風呂に入れないのか?という登山者がほとんどらしいから、山荘と名付けてもいいのかもしれない。そんな過保護な奴は山へなんか来るな!とは言えない弱みがあるのか、客に迎合する卑屈な根性になりさがったのか、夏場二ヶ月しか稼働できない苛酷な商売だろうが、設備があろうが無かろうが、来る奴はチャンと来るんだし、風にさらされない場があるだけで嬉しがる人をだけ相手にすればいいんじゃないか。
※山小屋は快適なのに越したことはないですけど、別にケーキやレストラン顔負けの料理なんか無くてもいいですけどね。でもビールは欲しいです!(^^ゞ 
 
 


(荒川前岳北西面カールで)
>南アルプスにもこんな氷河があったんだ、一万何千年か前にここに立ってみたかった。自分の生まれたところの素晴らしさに気が付きもせず、金とヒマをかけて遠い外国ばかり出かけ、ついには自分の庭を知らずに終わってしまう。
※これは価値観の違いもあるでしょう。海外にも素晴らしい山がたくさんあるでしょうから、お金がある人はそちらに没頭しても構わないと思います。まあ、私は無いのでこの意見に賛成!^^
 
 
 

(西表島で)
>日本は狭い狭いというけれど、亜寒帯から熱帯までを占有する超大陸国家だという認識をすべきだろう。パスポートなしで行ける、こんなに変化に富んだ場所があるなんて何と幸せな国だろう。これで政府や官僚がマトモだったら、どんなに良い国かとつくづく残念でならない。
※日本って小さな島国だと国民は皆思ってますけど、ヨーロッパ諸国の多くは日本より面積が小さい国が多いんですよね。しかも日本は南北に長くて気候の違いが大きいです。政治家、お役人批判は著者の得意?とするところだったのかも。^^
 

 

 

 


以上、まとまりのない記事になってしまいました。著者の様な山歩きは私にはとても無理ですが、こういう山への向きあい方もあるんだなあ…ということを知りました。ちょっとアクが強くて?疲れますが、興味を持った方は読んでみて下さい。

 

他にもこの著者が書いた面白そうなタイトルの本があるので、また読んでみたいと思っています。

 

注)記事中の写真は内容とは特に関連はありません。


タグ:山の本
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